「……そういえば、どこ行くの?」



 するときょとんとした顔がこちらを振り向く。




「あれ? 言ってませんでしたっけ。

 私がいる、こことは違う世界――――魔法界ですよ」




 ……え?

 全身が凍りつくような感覚。


 こことは違う世界? 嘘、やだ、そんなとこ行きたくないよ。



 得体のしれない世界へ行くことに恐怖を感じていたけど、もうホウキはベランダから離れた空中だ。


 もう、戻れない。



 下を向いてしまうともっと怖くなってしまいそうで、しがみつくのに邪魔な顔を横に向け、目を閉じた。




「速度上げます。落ちないように気を付けて下さいね」



 ただでさえ怖いあたしに容赦のない言葉がかけられる。

 嘘でしょ……。



 その言葉通り、二人を乗せたホウキがぐんと速度を上げたのを感じた。

 さっきよりも速いスピードで前に進んでるのが感覚で分かる。


 ジェットコースターで目を瞑(ツブ)るとより怖い、と聞いたことがあるけど、どうやら本当のようだ。


 視覚が閉ざされると体で感じるしか情報がなくなり、聴覚も普段研ぎ澄まされる。



 あたし、ジェットコースターいけるけど足元ないのは流石に不安定だな……。




 あたしホウキに乗っている時に感じたのは、それで最後だった。