誠を掲げる武士



「へっ…?」


ぽかんと口を開けて聞き返す私の顔は、さぞかし滑稽だろう。


「信じるようじゃないか、君のその話。」


「おい、かっちゃん!
こんな薄気味悪ぃ話、信じるのか?!」


むっ…失礼やな、イケメン。

確かにそうやけど。


「いやぁ、だってなあ。
実を言うと君、昨日の夜、急に道端に現れて倒れていたんだよ。」


「えっ?」


「月の光が急に一点に集まったと思った瞬間、君はもうその場で倒れていてね。
それを見て私は、かの有名な竹取物語の月から来たかぐや姫だと思ったよ。
だから、月の神からの思し召しだと思って、君を連れ帰ったという訳だ。」


「かぐや姫…?」


「チッ、こんな得体の知れねえ女の何が、かぐや姫だ。妖怪の間違いだろ。」


私はムッとして後ろを振り返り、イケメンを睨みつける。


確かにそうやけど、まだ会ったばかりのよく知りもしない他人に、そこまで言われると腹が立つ。


「こらこら、年頃の女子に失礼だぞ。
でも本当に先の世からきたとなると、君は誠のかぐや姫に違いない。」


「はぁ…。」


この人、私の話を純粋に受け止めてくれるなんて、すごい良い人だ。

変な人に引っかかりそうだけど。



「そこでだ、そんな先の世から来たとなると、我々の今後の事もわかるのだろう?」


「っ…!」


やはり、そこに辿り着くか…。


ただの良い人、だけとはならなず切れ者らしい。