誠を掲げる武士



寒いので掛け布団を被り、部屋の隅々を確認していく。


入り口から左奥の方に机があり、その机には隙間がないくらいの半紙が山積みになっている。


そして、その右側に低いタンスがあり、そのタンスの前にキセルが小さな箱に立てかけられていた。


まるで、時代劇の部屋の中をみているようだ。


いや、でもそれにしても…。


「この部屋汚すぎる…。」


丸められた半紙が机の周りに、コロコロと転がっている…いや足の踏み場がないくらい転がり過ぎている。


幸い、私の寝ていた布団の近くは転がってきてはいない。


さっきは入り口の方しか見ていなかったので、気づきもしなかった。


もう一度ぐるりと部屋を見渡すが、私の記憶に全くない部屋には違いなかった。


私は、忘れていた布団畳みをし、転がっている半紙を拾う。


「なん、この文字。ミミズやん。」


広げた半紙には、何が書いてあるのか解読不明の、縦に綴られている文字。


この部屋の主は、こういう文字を仕事にしている書道家か何かなのだろうか。


悶々と考えつつ、私は手を動かす。


くしゃくしゃの紙を広げ、重ねる。

紙は丸めるより、広げて重ねる方がコンパクトになると、昔祖父から教えてもらったからだ。