ゴールネットを揺らすのは。


「…でもその日は生憎の台風で

視界も悪くて…それで…

信号を青だと思ってやってきた

車と衝突して、意識不明の重体。

私たちに会うときにはもう…。」

泣いてはいけないと、

俺には泣く資格はないとわかっているのに

逆らうことはできない

「それから1週間ほどして警察から

電話があって車内の荷物をとりにきてほしいって。

それで私とひかりと息子の陽介と3人で行ったの。

するとね、私もびっくりしたわ。

他のものは全部雨やらなんやらで

ぐちゃぐちゃなのに1つだけ、

少しだけ濡れてたりするぐらいで

驚くほど綺麗なままなの。

開けてみるとそこにはボールがあって。

それを見てひかりは思ったんだろうね、

自分の誕生日プレゼントを買いに行ったがために

お父さんは死んじゃったんだって。

以来ひかりはバスケをしなくなったの。」