気づくと、俺は
柔らかいベッドに横たわっていた。

自分のベッドは
こんなに柔らかいはずがない。

ほんのりとバラの香りがする。

あぁ、なんて心地よい…

「…じゃねぇよ!!」

ガバッと起き上がって、辺りを見回す。

綺麗に整った部屋は、客室だろうか。

大きな窓は開いていて、赤いカーテンが揺れている。

風がおさまって、静かになったその布の陰から……

人が、少女が現れた。

「随分と騒がしい目覚めじゃないか。具合はどうだい?」

ニヤリと笑ったその顔は美しく、でもいたずらっ子のようで愛らしい。

高めに縛った髪の先は、その美しい白髪に似合わず、異様に赤黒い。

黒いワンピース、黒いベスト、黒い手袋に黒いブーツをまとったその少女は、
俺に近づいてそう言った。

「は?具合…?」

首を傾げると、グキッ!と嫌な音がした。
無言で悶える。

…そっか、俺、高いところから落ちて、この人に助けてもらったんだっけ…。

どこから落ちたんだっけか………

「その調子じゃ、まだ治りそうにないねぇ。寝ていなよ。薬草を取ってくる。」

「あ、いえ、俺帰ります。いつまでもお世話になるわけには…」

俺がそう言うと、少女は足を止め、クルリと振り向いた。

「何を言っているんだ?君に帰る場所なんて無いじゃないか。」

そして、次の言葉で、俺は何が起こったのか、全部思い出した。



「君の家も母様も、巨大な豆の木の下敷きだよ?」