そのうち私には新しい彼氏ができた。
彼にはもっていないものをその人は全て持っていた。
安心、安定、お金の管理、休日…
それが自分が一番求めているものだと信じ込んだ。
彼への思いにそっとふたをして、気付かないふりをして、見ないようにした。
ちょうど別れたタイミングで彼が正式に本部に移動になり、職場で顔を合わせることもなくなった。
もし、彼が移動していなかったら、戻っていたかもしれない。
けど、もう遅かった。
その人が持っているものこそが私にとって一番大切だと信じ込んで、その人のことは好きではなかったけれど一緒にいると楽しかったから、付き合った。
その人は本気になった。
プロポーズもされた。
そのとき、彼の顔が頭からはなれなかったけれど、かきけすようにして、プロポーズに応えた。