彼との出会いは、高校を卒業してすぐに働き出した、イタリアンレストランだった。年齢はひとつ上だったけれど、同じ時期にはじめた同期で、偶然にも地元も同じ。当たり前のように、すぐに仲良くなった。

レストランでは、ライバルとして、仲間として切磋琢磨した。飲みにいけば料理の話ばかり。あの店の料理は美味しい、あの店はお酒も美味しい、あの料理を上手く作るコツは…そんな話ばかりした。地元の話もたくさんした。くだらない話をたくさんした。それが、たのしかった。

彼の向上心を、夢を、尊敬していた。半ばただの趣味のように働いていた私とは違い彼は本当に一途だった。料理しか見えてないようにも見えた。



そのときの私には、好きな人がいた。彼にも、彼女がいた。けど、料理ばかりでほとんど会うこともなく、彼女さんも病気がちで冬には別れたと人伝いに聞いた。私ももう、その人のことは諦めかけていた。


彼と二人で、仕事帰りに飲むことが増えた。ただただ、楽しかった。二人でいても気も遣わない、お互いが自然でいて、とても気が楽で、とにかくとにかく楽しくて。料理の勉強にも自然と力が入った。料理も、仕事も、楽しくなった。彼に負けたくない、彼に褒められたい、彼と共同で作った料理やソースを先輩に褒められると嬉しい。彼といると、全てが充実した。


そんな、1年目だった。