見上げてみると、そこにはしっかりネクタイを締め、スーツを着た男の人が立っていた。 「ー...。」 私が泣いていることに気付いたその人は何も言わずに、そっとハンカチを手渡してくれた。 恥ずかしさと情けなさで何も言えずにいると、その人は何かを思いついたような顔をして店に入り、ホットココアを手に持ち戻ってきた。 「これ、どうぞ。温かいものを飲むと落ち着きますよ。」 そう言ってにこっと微笑むその人に安心感を覚えた。