裏道万屋の事情

その時、


「俺は、生まれたときから両親ともいない。ってか、今だに誰が両親なのかすら分からねぇ。確かにお前等とは違うから、お前等の気持ちは分からねぇな〜。」

輝さんはいきなり平然とそう言った。

弘さん以外、そこにいた全員が固まった。

松風 蓮も驚いた表情で輝さんのことを見つめている。


前に弘さんが「輝は昔色々あった」って言っていたけど、きっとこのことだよね―――


「でもなぁ………俺、お前みたいに自分を不幸だと思ったことはねぇ。」

「……………。」

「確かに、生きるために金は必要だ。だけどな…幸せは金で代用できるようなもんじゃねぇ。それに世の中には金よりも大切なもんがいくらでもあんだよ。それが、本当に幸せになるために必要なもんだ。」

「…大切なものって…??」

「一つはもう手に入れてんだろ??自分の周りをちゃんと見てみろ。こんなにダチがいんじゃねぇか。」

「……っ!!!!」

「他はこれからお前等が自分で少しずつ見つけていけば良い。大切なもんは逃げないし、お前等に見つけられんのをずっと待ってんだ。焦んなくても必ず見つかるさ。今みたいにな??」



輝さんはそう言って不良達に優しい笑顔を向けた。