裏道万屋の事情






嵐はたくさんの人々の間をスピードを緩めることなく走る。



「(俺は…何でこんなに必死になって走ってるんだ…。)」



そうは思っても、身体は止まることを知らないかのように走り続けている。


嵐の心の奥底にある想いが無意識にそうさせていた。










――パシッ――















「?!」



嵐は突然腕を掴まれ、強制的に足が止まる。










「はぁっ…はぁっ…やっぱり嵐だ〜!!遠くから走ってるのが見えて…。」



嵐の腕を掴んだのは笑顔の雛乃だった。



「ヒナ…。」

「そんなに急いでどこ行くの??」

「俺は………よく分からないけど早く行かなきゃいけない。――そんな気がする。」

「えっ…??」



嵐は雛乃の腕をパッと振り切ると、また全速力で走り出す。



「ちょっと……嵐?!それ答えになってないよ!!……行っちゃった…。」



残された雛乃がふぅ、と溜め息をついたとき――



誰かと肩がぶつかった。



「…おっと。わりぃな、ちょっと急いでるんだ。」

「………は、はぁ。」

「輝明さん早く!!」

「あぁ!!」



雛乃に謝るとすぐ、輝明と諒は走り去る。



「あれって…嵐のお店にいた店員さん…??何でみんなして急いでるの??」



気になった雛乃もその後を走って追い掛けた。