裏道万屋の事情

――次の日、心配する輝さん達に精一杯の笑顔を向けて大丈夫だと言ったあたしは仕事に復帰した。



何となくぎこちない笑顔になってしまうしボーッとしがちだが、どうにか接客はこなせている。



人間やろうと思えばどうにかなるもんだなー…。





あたしがそんなことをうっすら考えていると――



















「なぁ兄ちゃん??」



若い２人組の男性客があたしに話し掛けてきた。



『はい…??』

「ここのアラシって店員いるだろ??実はさっきナオって店員にこれを渡すように頼まれたんだけど、あんたがナオだろ??」

「すぐ読んでほしいらしいぜ。」



そう言って渡されたのは二つ折りにされたメモ用紙。


『嵐から……??』



あたしはそのメモ用紙に目を通す。





――どうしても話したいことがあるから今すぐ来てほしい。美空岬(ﾐｿﾗﾐｻｷ)で待っている。――





あたしは店内を見回した。


確かに今店には嵐の姿が無い。


ってことは休憩中…??


それで嵐はあたしを待ってるってことか…。



『ありがとうございます!!』

「いえいえ〜。」



あたしは男性達にお礼を言うと店の出入り口へと走る。


その人達がニヤリと笑っていることも知らずに…。










――このときのあたしは冷静さを失っていたんだ。



いつものあたしならこの男達がこの前ヒナに絡んだ奴等だと気付けたハズなのに…