「申し遅れましたが、私が嵐くんの担当医師の氷室(ヒムロ)です。」

『あ…叶 菜子です。』

「嵐くんの傷、順調に回復しているのでもう時期退院できますよ。」

『本当ですか?!』

「はい。」

『そっか…良かったぁ〜…。』



あたしはホッとした。


けど同時に、入院中に記憶が戻らなそうなことに悲しさを感じる。


やっぱりどうしようもないのかな………







はっ!!

いかんいかん!!!!



もう諦めないって決めたばっかじゃん!!


しっかりしなきゃっ!!!!



「桜庭さんから話を伺いました。あなたの記憶だけが抜け落ちてしまっていて、嵐くんはあなたに会いたがらないのだとか…。」

『…はい。』

「それはあなたに会うことであなたを思い出しかけているという証拠です。記憶を思い出しそうになると頭痛が起きるようです。嵐くんはその頭痛を避けるために無意識にあなたを遠ざけようとしているのだと思われます。」

『…そう…なんですか…??』

「ええ。」



ってことは――



『あたしと接触している内に思い出す可能性が…??』

「簡単にいくかは分かりませんが、可能性はあると思います。」



氷室先生はあたしにそう告げた。