裏道万屋の事情

「何か、あったんですか…??」

『え……??何で??』

「だって―――











菜子…とても悲しそうな顔しているから…。」

『……!!』



あたし、そんな顔してた…??



『そんなこと無いって!!心配しな―――』



無理矢理笑って言葉を発していたそのとき、両頬にひんやりとした感覚を感じた。


愛羅の白くて冷たくてきれいな両手が私の頬を包んでいたのだ。



「無理して笑わなくて良いんですよ…??私で良ければ何でも話して下さい。」

『………。』

「――あのとき菜子が私を助けてくれたんです。…だから、今度は私が菜子を助けたいんです。」

『…愛羅っ……!!』



ずっと、


病院から、


嵐に言われた言葉を聞いたときから…





“……………誰。”


“…何か、あんた見てるとイライラする。帰ってくんない。”





我慢していた涙が零れてしまった。



『ごめ…愛羅……うっ…』



本当はあの時すごく辛かった。


死ぬほど辛かった。


でも強がりのあたしは何でもないふりをした。





―――けど、


あたしってそんなに強くなかったんだ…。





『忘れちゃ嫌だよ…嵐…』



あたしは愛羅の胸の中で泣いた。


そんなあたしを、愛羅は何も言わずにずっと抱きしめていてくれた。