「では、まず結論から言います。羽野さんの頭の傷は出血の割に浅いものでした。手術の結果、命に別状はありません。」



良かった……


そう思ったのも束の間、



「――ただし、幸い傷が浅かったとはいえ、固いもので勢いよく殴られた訳ですよね??頭への衝撃は相当大きかったと思われます…。」

「それはつまり…どういうことですか??」



弘さんが切り出す。



「つまり――記憶の方に障害が出る可能性があります。」

『それって――…』




































「今までの記憶を全て、または一部失っている可能性がある…ということです。」













































「菜子っ!!」

「嵐くんはっ…??!!」



あたし達がロビーに戻るとすぐ、樹里と諒が駆け寄ってきた。



『…うん。命には別状ないってさ!!さすが嵐だよね〜!!』



あたしは無理矢理笑ってそう言った。



『輝さん、弘さん。あたし先に家帰ってます!!』



普通の顔ではそこまで言うのが精一杯だった。


あたしはその場から走り出す。



「ちょっ、菜子っ??!!」



樹里の声が後ろで聞こえたけど、あたしは振り返らずにそのまま病院を出て走り続けた。





視界がぼやける。



頬を何か冷たいものが流れては零れ落ちていった。



家に着いて中に入り、後ろ手で扉を閉めた。

扉に背を預けると同時に脚の力が抜けて、あたしはズルズルとしゃがみこんでしまった。



『…うぅっ………。』



あたしはしばらくそこで泣き続けた。



――“今までの記憶を全て、または一部失っている可能性がある…ということです。”――



医者のその言葉があたしの頭の中をぐるぐると回っていた。



教訓 20... -end-