「その日から、俺は自分の名前は捨てて『桜庭 輝明』として万屋を受け継いだ。そんで今に至るって訳。…自分の本当の名前は、実はもうよく覚えてねぇ。ただ、俺の名前にも『輝(テル)』って付いてたのだけは今でも覚えてんだ。」



輝さんは微かな笑みを浮かべた。



「だから、何となく他の万屋とは提携しにくかった。俺は本当の『桜庭 輝明』じゃないから……。」

「…そうか。何の連絡も一切寄越さないからおかしいとは思ってたんだけど、まさか『裏道万屋』が…。」



輝さんは閉じていた目を開き言った。



「けど、今回のことで分かった…今の万屋には提携が必要なんだな。俺は『輝明』さんではないけど、もし俺を万屋として認めてくれんなら………提携させてほしい。『輝明』さんだったらきっとそうすると思う。」

「…あぁ、もちろんだ。今はあんたが『裏道万屋』なんだしね。みんなにも提携するってことは伝えとくよ。よろしくな、輝。」



ニッと笑って響さんは輝さんに手を差し出した。



「こっちこそよろしく頼むな。」



輝さんはその手を取り、2人は握手を交わした。