「……あれ……??」



救急箱片手に戻ってきた光。


辺りを見回すがいるはずの菜子がいない。



「え…どこ行った??待っててって言ったのに――」



そこまで思って何かが引っ掛かった。





あれだけ痛さを訴えていた菜子。


実際表情からも痛さを読み取れたし、足も浴衣とはいえ、かなり細かい歩幅で負担を掛けないように歩いていた。


おそらく我慢をして歩き続け、ほとんど限界まで来ていたのだと思われる。





そんな状態の足で一体どこへ行けるというのだろう。






















ふと、光は石段に落ちている何かに気付いた。



「……これはっ――!!!!!!」



落ちていたものを拾い上げると、光は走り出した。

































そこに落ちていたのは、山吹色の巾着。



それは紛れもなく、さっき菜子が持っていたものだった。








「こんなの…自分でどっか行くんなら、置いていくはずがない…!!!!」








そして確信した。







あいつ等だ………!!


あいつ等に誘拐されたに違いない。














自分達のためなら手段を選ばない。













…そういう奴等だ――。