クリスマスイブ、お兄ちゃんと私は、再び地主神社にいた。
 そう、告白するために、私が誘ったから。
「奈津美って、ここが大好きなんだな」
 お兄ちゃんは無邪気に笑う。
「うん、それでね……聞いてほしいことがあるの」
 奈津美はすぐに切り出す。
 後回しにすればするほど、言いにくくなってしまう気がして。
 私の真剣な様子に、お兄ちゃんの笑顔もあっという間に引っ込んだ。
「どうした? 何かあった?」
 心配そうに聞いてくれるお兄ちゃん。
 言わなきゃ……!
「えっと……私……お兄ちゃんのことが好きです」
 お兄ちゃんは、呆気に取られたような表情をしていた。
「え? その……恋愛的な意味で……?」
「うん、恋愛的な意味で」
 うう……恥ずかしい……。
 でも、言っちゃった。
「ありがとう。俺も奈津美のこと、初めて会ったときからずっと好きだったんだ」
「えええっ?!」
 うそ……。
「お兄ちゃん、それって……恋愛的な意味で?」
「うん、その意味で」
 再び笑顔になって言うお兄ちゃんの言葉が、すぐには信じられない私。
 お兄ちゃん……そんな素振りは一度も見せてなかったのに。
「だから、あの写真を見て、嫉妬してたんだ。彼氏かなって思ってね。でも、奈津美がこうして俺のことを好きって言ってくれたことを思うと……あの人は彼氏じゃないんだよね? 元彼かな?」
 そ、そうだったんだ!
 誤解させちゃってたみたい……。
「ううん、あの人も、私のお兄ちゃん」
 一瞬きょとんとした表情をするお兄ちゃん。
 でもすぐに事情が飲み込めたようだった。
「ああ、そうだよな! 父さんも母さんも再婚なんだし。俺にだって、今はほとんど会ってないけど、弟がいるし」
「えっ?」
 初耳だった!
 お互い、前の家族のことなどは、話題に出したこともなくて。
 多分、「今の家族に失礼」って思いが、私たちの中にあったんだと思う。
「父さんが離婚したとき、俺は父さんについていって、弟は母さんについていったんだ。俺の生みの母さんにね」
「そうだったんだね~。じゃあ、弟さんのお写真を見せてくれる?」
「やだ」
 お兄ちゃんはなぜか即答だ。
「え~。私の写真は見たくせに~。なんでダメなの?」
「弟のことを好きになられては、かなわん」
 そ、そんな理由で……。
「私、そんなに軽い女じゃないよ~。お兄ちゃん以外の人を好きになるわけないじゃん」
「その言葉は嬉しい。でも怖いから……まぁ、考えておくよ。しかし、そっか~。あの写真に写ってたの、奈津美の兄貴だったのか。てっきり、彼氏か何かだと思って、ずっと悩んでたんだ。めちゃくちゃ嫉妬してたよ」
「うう……誤解させてごめんね」
「いいっていいって、俺が勝手に勘違いしてただけだし。それより……これからよろしくな。たしか、血が繋がってない場合は、結婚も出来るみたいだし、別に付き合っても何ら問題ないだろ」
 け、結婚って……。
 急にそんなことを言われると、ちょっとびっくり。
 でも、そういうこと言ってくれるの、すごく嬉しいけど。
 うん……いつかは、一緒になりたい……。
 お兄ちゃんは私にとって、素直にそう思える人だ。
「う、うん……こちらこそ、よろしくね!」
 顔が熱くなるのを感じながら、私はそう言うと、お兄ちゃんの手をぎゅっと握る。
 温かくて大きな手を。