あれ、でもどうして此処に新見さんがいるんだろう?
いつも芹沢さんにべったりの新見さん。
例によって、芹沢さんと一緒に私たちとは違う所で食べてるはずなのに……。
あ、そうか。
鬱陶しいから芹沢さんに追い出されちゃったのか……
そんな事を思っていると、不意に誰かぎ私の背後に現れた。
「あ、相田さん」
「ーおう…天城、新見さんから言伝だ。
『芹沢先生が、大至急来るように』だってさ」
私にそっと耳打ちすると、相田さんは永倉さんに軽く頭を下げると空いた膳を持って大広間から去って行った。
「おいおい、新見さん……なにも人伝に言ってくるこたぁねぇだろうが」
「……」
全くです。
心の中で頷くと、私は永倉さんの耳元に口を寄せた。
「……あの、永倉さん……すみませんが『承知しました』と“新・見・局・長”に伝えてくれませんか?」
「……あーーはいよ、毎度のことだが、良くやるなぁお前ら」
「ははは…っ」
私は敢えて、“新見局長”を彼に聞こえるように強調した。
すると、思った通り。
「ーーー」
新見さんからの視線に殺気が籠もり始める。
わーー、恐い。
流石に局長やるだけあって、殺気の使い方が巧みなんだから。
私は最後の一口を頬張ると、膳を持って立ち上がる。
「それじゃ、永倉さん。お先に失礼しますね」
「はいよ……」
片づけをパパッと終わらせて、襷を解くと、芹沢さんの居るであろう部屋に向かった。
「芹沢局長、天城です」
襖越しに芹沢さんの気配を感じる。
相変わらず、彼の纏う雰囲気は煙のようで、掴むに掴めないものだった。
入室の許可を取って、静かに部屋に入る。



