「にぃー?にぃー?」
傾斜を転がり落ちないようにぼくは、ちょっと大きめな声で呼びかけながら歩いた。
車椅子の扱いには慣れたけど、筋肉のついてない細い腕でこの坂を落ちたら……。そう考えて少し怖くなる。

(にぃ……。家の遠くには行ってないと思ったのに)
にぃは茶トラで、鼻のまわりだけ白い。くりくりの目と柔らかく高い声のぼくの友達。
というかうちの飼い猫。

家にいるときはとても甘えてくれるのだけれど、こうしてふらりと旅にでてしまう。

「にい?」
そしてぼくはそこで、草むらで戯れるにいと
1人の少女を見つけたのである