〝お父さん!!!お母さん!!!行かないで!!!私を置いていかないで…〟

「…!!ハァ…変な夢みたな。」
一人暮しを始めたあたりから毎日のように変な夢を見る。
お父さんとお母さんが私を置いていなくなる夢…
「本当嫌な人生…夢の中でも。」
そして、お決まりのようにこうなるともう眠れない。
「…最悪......。」

「...ハァ。やっと朝か。」
今日から通う新しい学校の制服を着た。
『クラスの皆とは距離をおかなくちゃ...』


ー学校ー

『根城高等学校第一高かぁ…』

ガラガラッ
「失礼します。」
「あ、あなたが今日から来る転校生??」
「はい…。」
「ちょっとまってね!!!」
優しそうな先生だなぁ。保健室の先生かな…
「青山せんせー!!」
「はい。呼びましたか!?野山先生」
「転校生の子が!!!」
「おお!来ましたか!!君が西野さん?」
「はい。西野実子です。」
「よろしく!俺は君の担任の青山庄吾だ。」
「…よろしくお願いします。」
「早く馴染めるといいな。」
「…はい…」
馴染めなくていい…むしろ馴染めたらダメなんだ…
「んじゃ、そろそろ行くか!」
「はい。」
「緊張しなくて大丈夫だぞ?皆おもしろいやつばっかだからな。」
「…はい。」
「じゃあ、西野はここで待ってろ。合図するからそしたら入ってくるんだぞ!」
「はい。」
先生は教室に入っていった。
私は1人廊下で待っていた。
すれ違っていく人達に見られるが気にしない。
「西野入って来い。」

ーガラガラー

「この子が今日からこのクラスに転校してきた、西野実子さんだ。それじゃ、西野自己紹介を!!」
「…西野実子、2つ隣の市から来ました。
…私は誰とも仲良くなる気はありません。友達もいりません。よろしくお願いします。」
「あ、ちょっと緊張してたのかな?西野、皆と仲良くしろよ!んじゃ、席だがなー…伊藤の隣にしよう。初めては女子の方が仲良くなりやすいからな。」
「…誰とも仲良くする気はありません。」
「そんなこと言うな、西野ー。じゃー伊藤の隣が今日からお前の席だからな!!!伊藤、仲良くしてやれよ!」
「…あ、はーい!」
私は伊藤と呼ばれた人の隣の席に向かった。
「西野さん、よろしくね!!」
伊藤さんは顔が小さくて、目がパッチリで人形みたいに肌がキレイで…
『かわいいなぁ…』
「………よろしく。」
女の私から見てもとても可愛い…
だから、余計近づいてはいけないんだ。
不幸にするから…

キーンコーンカーンコーン

私は、すぐにお弁当を持って教室を出た。
目指すは…誰もいない場所。
1人になれる場所…
授業中や休み時間、伊藤さんが話しかけてくれたけど全て無視をした。
私は皆と距離をおかなければいけないんだから。
仲良くしてはいけない…
相手に好意を持てば不幸になってしまうから…
『私は1人で大丈夫。大丈夫…』
気づくと私は屋上にいた。
「はー。すっきりする…」
屋上ってお母さんやお父さんに少し近づいてる気がするから好き…
『雨ふるかな…』
今日の空は今にも泣き出しそうなそんな雲だった。
「早くお弁当食べよ…」
私がお弁当を広げようとした時…
「あ、いたいた!西野さんこんな所にいたんだ!よかったら一緒に食べよ?お弁当!」
伊藤さんだった。
「…いい。1人でいい。」
「なんで?皆で食べた方が美味しいよ?」
「なら、伊藤さんはお友達と食べればいいじゃない。」
「んーそうなんだけど。西野さんとも食べたいな…」
正直嬉しかった…誘ってくれて。
でも、でも…そんな時空から涙のように一粒、また一粒雨が落ちてきた。
「雨降ってきちゃった!西野さん、中でお弁当食べよ?」
「…ない、」
「…え?」
「いいって言ってるじゃん!私は友達なんていらない!誰とも仲良くなる気なんてない!もう話しかけないでよ!そーゆーのウザイから!!」
…言っちゃった。
せっかく優しくしてくれたのに。
伊藤さん…ごめんね?
伊藤さんは何も言わないで屋上から出ていった。
雨で分からなかったけど泣いてるように見えた…
『どんだけ私って悪者なの?』
そう思ったら私の目からも一粒、二粒…もう止まらなかった…
私は雨が降る屋上でいつの間にか鳴っていた昼休み終了のチャイムを聞きながら泣いていた。