そんな疑問を浮かべるあたしをよそに、その綺麗な瞳をに空を映して、男の人は話を続ける。
「確かにさ、深い海の底は光なんて届かないところかもしれない。
真っ暗で周りに誰もいなくて、一人で淋しいところなのかもしれない。
浅いところ、明るいところで生きているやつに比べれば、そこは息苦しいのかもしれない。
でもさ、こうやって綺麗なものもあるんだよ」
いつのまにか、あたしは彼の横顔を見つめていて。
不意にこちらを見たその瞳に、ドキ、と心臓が動いた。
「どんな暗い場所でも、光となるものが、心を照らしてくれるものはあるんだよ」
あぁ……なんでだろうな。
この人の言葉が心に染み渡る。
まるで雪のように。
あたしの心の上に降り積もって、黒くて汚くて、醜いものを浄化して、浸透していく。
ズケズケと心の中に入ってこられるの、好きじゃないのに……むしろ嫌いなのに。
でも、この人は大丈夫。
それどころか、もっと知って欲しい、なんて……


