グッと唇を噛み締めて我慢していると、不意に冷たいものが頬に触れた。
「あ、雪だ……」
隣の声につられて顔を上げると、白い雪がふわふわと辺りに降り注いでいた。
公園の外灯に反射して、たまにキラリと光を放つ。
綺麗……
思わず見とれてしまう。
しばらくの時間、あたしはただ雪を見つめていた。
「"マリンスノー"って知ってる?」
「マリン、スノー……?」
聞いたことのない言葉に、あたしは首を傾げた。
そんなあたしを見て、男の人はフッと笑って空を見上げた。
あたしも空を見上げる。
変わらず雪はふわふわと地面に降り、世界を白く染め上げていく。
「海雪、とも言うんだけど。深海に降る白い雪のこと」
「深海に、雪?」
「うん。神秘的だよな」
そういう問題?
海に雪なんてありえないでしょ。


