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「茉莉(まり)ちゃん、今日はあがっていいよー」
「あ、はい。分かりました」
お疲れさまでした、と言うと、お疲れさま、と笑顔を向けてくれる。
あたしも笑顔を返して、職場である喫茶店を出た。
「はぁ……さむ」
早く家帰ってあったかいココアでも飲みたいなぁ。
かじかんだ指先に息を吐いて、あたしは家に向かう。
しばらく歩いていると、ひんやりとしたものが落ちてきた。
「あ、雪……」
ふわり、ふわりと、真っ白な雪が落ちてくる。
こんな日は、あそこに行きたくなってしまう。
あたしの心を溶かしてくれた、あの人と出会ったところへ。
あたしは足を止めて、家とは違う方向へ歩き出した。
「やっぱり、落ち着くなぁ、ここ……」
空を見上げながら、途中で買ったホットココアを口に運ぶ。
体の中にジンワリと温かさが広がった。


