あの男の人に出会ってから、あたしの中で何かが変わったと思う。
相変わらずあの人たちは顔を見合わせればお互いを罵りあって、怒鳴って、叫んで、うるさいことには変わりはないんだけど。
それでも、前ほど息苦しいとは感じないんだ。
目を閉じると思い出す。
あの夜の全てを。
澄んだ空気の冷たさ、音のない、一人ぼっちだと思っていた世界。
そこに柔らかく降ってきた、真っ白な雪。
その雪のように冷たくて優しくて。
あたしの心に降り積もり、あたしの心を溶かしてくれた。
心を照らしてくれた、光をくれた、冬みたいな人。
あの瞬間から、あたしの心を、捉えて離さない人。
あたしは、あの人のことを……


