「嫌なら、自分の家にあげていませんよ。」





「ただの同情ですか。」





「そんな!違います!!
龍馬さんは、辛くないんですか…」





「なぜ?」





「家族のところにでも、行けばいいじゃないですか…。帰る家がないなんて…。」





「僕には帰る家も、家族も、辛いという気持ちもありません。」





「えっ…」


 


「お風呂が湧きました」





凛々しい機械の声に、僕は目を覚ます。
余計なことまで喋っていた。




 
「あ、…お風呂、どうぞ。」 





「…はい。」









…感情のない僕にとっては、家族なんていなくても、寂しい、とか、辛い、とか、愛おしい、とか、まったく理解できない。
もっとも、家族のいない僕には知る必要もない感情だが。









「ありがとうございました。」





「あ、はい!
着替え…女物ですが…多分着れると思います…。」





「…はい」





「あの、今夜はどうされるんですか?」





「…さぁ。」





「じゃ、じゃあ、泊まりますか?」





「羽奈さんがそれでいいのなら。」





「あ、はい、泊まっていってください!」