「ねね、音羽?あのドラムの人かっこ良くない?」

「ドラムー?」

ん?あの人どこかで見たことあるような
さらさらの黒髪で綺麗な顔立ち…

「あっ!!!」

ばっと周りの人がこっちを向く
視線が痛い

「どーしたの?」

「あの人!私を舞台袖まで連れていってくれた人」

そうだ、彼だ
すごくかっこいい…
堂々とドラムをたたいている

あの人ドラムだったんだ

「へぇー、イケメンじゃん」

にやっと笑う智妃

イケメンかぁ、確かに、なんか雲の上の世界の人みたいだ

「いいなぁ、音羽、あんな人と話せてー羨ましーわ」

「でも、お礼言えてない…」

「え!?それはダメだよ、ちゃんと言わなきゃ」

「だよね…」

せっかく連れていってもらったのに何も言わずに去るなんて、最低だな

『ジャアァァアン!』

ドラムの音が響き渡り演奏が終わった

行かなきゃ
お礼言わなきゃ

「ち、智妃!!私…」

「はいはい、いってらっしゃい」

「ありがと!」

智妃はなんでもわかってくれる
ありがと