バレンタインの悪戯




「まさか口移しとはね…」

「でも成功してみせました」

「違反すれすれだけどね」

「え…じゃあ…」


表情を曇らす私を見てふっと笑った彼はなんて顔してんのと私の顔を持ち上げる。


「ごーかく。いいよ雨宮さん俺と付き合ってよ」

「ほ、本当ですか?」

「うん。ってかぶっちゃけ両想いだったけどね俺達」

「え?」

「余りに動揺してあんなこと言っちゃうしあのまま帰ったらどーしよって思ってた。でも、スリルがあっていいかもね付き合う前のキスもさ」

「丘野君の唇結構柔らかいんだなあって思っちゃいました」

「そーいうこと無邪気に言うの止めて。止まんなくなる」


赤い顔の丘野君が可愛くて何故だか無性に虐めたくなって来てしまった。


「そーいえばどーでしたチョコ」

「覚えてないよ。それどころじゃなかったし」

「じゃあもう一度確かめてみます?」


袋の中からチョコを一つ摘まんで問い掛ける。


「自分で食べます?それとも…もう一度悪知恵働かせてみましょうか?」