違う……騙しているのは私の方……。



それに、拓磨くんは悪い人じゃない。
ただ、人と接するのが得意じゃないだけなんだ。
みんなが自分を避けていくから……。


拓磨くんは優しい人だ。
じゃないとカイロくれたり、満員電車で私が潰されないように守ってくれたり普通はしないもん。



拓磨くんが良い人なんだって、みんなに私が教えてあげないと……!


と、立ち上がろうとしたときだった。



ガタン―――



私よりも先に拓磨くんが立ちあがった。



「美憂ごめん、放課後には戻ってくるから」



「え!?」



拓磨くんは私にそう言うと、カバンを持って教室を出ていこうとする。



「おい、矢野。どこに……」



「……体調悪いんで、帰ります」



ガラガラ―――



拓磨くん、帰っちゃった。
どうして急に?
もしかして、さっきの女の子たちの会話で気分を悪くした、とか?
それとも、本当に体調悪いとか?