「……今朝のことはほんと、気にしなくていいから」



「う、うんっ」



気にするなって言われても……気にしてしまうのが事実だけど。
でも、あんまり考えないようにしよう!!
じゃないと何事にも集中できなくなっちゃうし!



『他の男には見せたくないってこと』



『そういう可愛い表情されると困んの。わかる?』



……って、あぁぁぁ!!!
全然頭から離れないよぉ……。
拓磨くんの匂いも、声も、胸の温かさも鮮明に覚えてるよ~……。



忘れなきゃ、忘れなきゃって思うほど、思い出してしまう。



そのときだった。



「ね、昨日、矢野拓磨と美憂ちゃんって一緒に帰ってたよね?」


「見た見たー!今朝も一緒に登校してたし。もしかして付き合ってるんじゃない?」


「えー!確かに2人とも美男美女だけど、でも、美憂ちゃんは真面目だし、あんな怖い人と付き合うなんておかしくない?もしかして脅されるんじゃ……」


「それしか考えられないよねー。美憂ちゃん、純粋そうだから騙されてるのかも」



後ろの方から女の子たちのそんな会話が聞こえた。



わ、私が騙されてる?拓磨くんに?