結局、一緒のポケットに手を入れたまま、駅まで来てしまった。
「俺、切符買うから待ってて」
「う、うん」
私は定期入れから定期券を取り出して、拓磨くんを待つ。
……あれ?
拓磨くんて確か、私と同じ町に住んでるんだよね?
なのに、定期券持ってないのかな……?
徒歩で学校来てるとか?
いや、それは絶対ない。
徒歩で通学なんてしてたらすっごく時間かかるもん。
「おまたせ」
「拓磨くん、定期券持ってないんだ?」
「……あぁ、ちょうど昨日、定期の期限切れてさ。また今度買う」
「なるほど!」
そういうことか!
スッキリスッキリ。
改札を通って、駅のホームに立って電車を待つ。
ふと見ると、同じホームに立っている同じ高校の女子2人が少し離れたところからこちらを見ていた。
「ね、あれって今日初めて授業に出たって言ってた、矢野拓磨じゃない?」
「ほんとだ!ピアスいっぱいあいてるし、髪色も明るいしね」
拓磨くん……ウワサされてる。
うちの高校ではこんなピアスの量と髪色は目立つもんね。


