「なに、俺との大人のキス、期待した?」
「しっ、してないよっ!」
確かに私と拓磨くんは付き合ってるけど、お互いに恋愛感情があるワケではないし、ね?
拓磨くんは私が拓磨くんのこと好きだって思ってるだろうけど……。
私の本命は、星司くんだもん。
もう叶わなくなったに等しい恋だけど、想うだけならいいよね。
「ま、俺と美憂は付き合ってるんだし?いつかはするかもよ?」
「うっ……」
拓磨くんを好きなフリをしなきゃ……。
拓磨くんの機嫌を損ねたら、なにされるかわかんないし。
殴ったりしないって言ったけど、一応……不良くんだし、万が一のことがあったら困る。
「別に俺は、今からでも全然OKだけど?」
い、今から!?
ど、どどど、どうしよう!?
「まっ、まだダメだよ……っ!」
私が必死に考えた答えはこれ。
これなら拓磨くんもなにもしてこないよね?
「はは、冗談だっての。アンタがいいって言うまでする気はないよ」
拓磨くんは笑って、私の頭をポンポンと撫でた。


