それから教室に入ると、俺は美憂の机の中に手紙を入れた。
「さよなら……美憂」
もう、美憂と会うことはないだろう。
美憂と他愛ない話をすることも、手を繋ぐことも、笑いあうことも。
短い間だったけど、すっごく楽しくてかけがえのない思い出になった。
こんなに人を愛せることは一生ないかもしれないな。
美憂の机を一回撫でると、俺は教室を出た。
すると、担任がたまたま歩いてきた。
「おぉ、矢野。って、またそんな髪色……」
「大丈夫ですよ、あっちの高校はここよりも緩いんで」
俺の次行く高校はバカ高校だから、ここよりも全然校則が緩いって聞いた。
「……そっか、明日もうあっちに行くんだっけ?」
「はい、明日9時発の新幹線で行きます」
「気を付けてな」
担任は俺の手を取って強く握った。
「……お世話になりました。色々ご迷惑をおかけしました」
俺も力強く担任の手を握り返す。
あぁ、寂しいな。
別れってこんなあっけないものなんだ。
胸にじんときて、涙がこぼれそうになった。


