そしてゆっくり目を閉じると、俺は夢の世界へと吸い込まれていった。
『拓磨、お父さん。リンゴ切れたわよー』
母親の声がどこからか聞こえてくる。
『リンゴ!リンゴ!』
『拓磨の大好きなリンゴだぞ~』
小さい俺を抱っこして、一緒にリンゴを頬張る父親。
『拓磨は本当にリンゴが好きね』
『俺に似たのかな?』
『ふふ、そうかしらね』
母親と父親がニッコリ微笑んで俺を見つめたところで、ハッと目が覚めた。
「なんだ、夢か……」
少し、懐かしかったな……。
そういえばあんなこともあった気がする。
大好きなリンゴに母親と父親。
幸せだったあの日を、俺はなんで忘れていたんだろう……。