「今はまだ色々ごちゃごちゃになってて、考えられないだろうから、ここに連絡してきてもらっていいかな?」
父親はポケットから取り出したメモとボールペンで連絡先を書くと、俺に差し出した。
「ごめんね、色々混乱させちゃって」
「いや……真実を知れてよかった。俺、ずっと母親は俺を裏切ったんだって思ってたから……」
「そっか。でも、お母さんの変化に気づけなかった僕が1番悪いんだ……本当にすまなかった」
父親は深く頭を下げた。
「いいよ別に。真実を知ることが出来ただけで、十分。教えてくれてありがとう」
「いやいや。それじゃ、体には気を付けるんだよ」
「あぁ」
「じゃあ僕はこれで」
父親は軽くまた頭を下げると、家を出ていった。
なにも知らなかった俺。
ただ他人に聞いた話を信じて、勝手に落ち込んで、心を閉ざしていた自分に腹が立った。
母親を信じてあげられなかった自分に……ムカついた。
俺は父親が残した連絡先のメモを握りしめ、自分の部屋のベッドに寝転んだ。


