「お母さんは、拓磨を殴ってなんかいない。お母さんは……たった一人で拓磨を育てて、愛していた。そんな拓磨をお母さんが殴ったりするはずがない」



「え?」



母親は俺を殴っていない……?
じゃあ、なんで……。



「拓磨を殴っていたのは、借金取りだったんだ」



「……っ」



父親の言葉に俺は驚きを隠せなかった。



借金取りって……どういうこと?
母親には借金があったのか?



「お母さんのお父さん……つまり、拓磨のおじいちゃんは莫大な借金を抱えていてね……。そのおじいちゃんが死んで、おばあちゃんはすでに亡くなっていたから、借金取りはお母さんに返済を求めてくるようになったんだよ」



父親から話される真実に俺は耳を傾けた。



「そして、ある日。僕の転勤が決まったときに、お母さんが別れを告げてきたんだ。離婚しようって。借金のことで僕に迷惑をかけないように……。僕はなにも知らなかったから、理由を聞き続けた。じゃあ、彼女は好きな人が出来たんだって言ったんだ」



母親と父親が離婚したのは、そういう理由だったんだ……。
離婚してから、母親は一人で借金を抱え込んで、俺を育てて……。