「た、拓磨くん……っ」
名前を呼ぶと、拓磨くんは立ち止まった。
「ごめん、美憂。俺のせいで変なことに巻き込んじゃって」
「ううん、いいの全然」
「よくないよ、俺がもっとはやく矢野星司の正体に気づいていれば……っ」
拓磨くんは悔やむようにすぐ近くにあった壁を殴る。
「そんなのいいの!拓磨くんが助けにきてくれただけで……それだけで十分だよ」
「美憂……」
最初はどうなるかと思ったけど、こうやって拓磨くんが助けにきてくれて、なにもされずに済んだんだもん。
「拓磨くん……本当にありがとう」
私の目からはまた涙が零れ落ちる。
「そして、ごめんなさい。無神経に色々聞いたり、拓磨くんのことを知ったようなこと言って……本当にごめんなさい」
涙を拭いながら深く頭を下げた。
こんなことで許してもらえるとは思わない。
でも、まずは謝らなきゃダメだ。


