「矢野拓磨には、人に話せないほどの過去があったってことなのかな」
「たぶんそうだと思う。でも私が無神経に聞き出そうとしちゃったから……」
拓磨くんはもう、私のことがイヤになって別れようって言ってくるに違いない。
でも、なんでだろう。
拓磨くんとは別れたくないって思う自分がいる。
私だって、はやく拓磨くんと別れたいってずっと思ってたはずなのに。
どうして……。
『今までずっと幸せに暮らしてきたお前に、俺の気持ちがわかるワケねぇよな』
そう言ったときの拓磨くんのあの表情が頭に浮かぶ。
ヤダ……拓磨くん、離れていかないで。
ずっと私のそばにいてよ。
私と別れて、他の女の子のところに行っちゃうなんて絶対にイヤ……。
「美憂?」
葵ちゃんがずっと黙り込んでいる私の顔を覗き込む。
ねぇ、私、今頃気づいちゃったよ。
「葵ちゃん、私……」
なんでこんなタイミングで気づいちゃったのかな。
「私……拓磨くんのことが、好き」
本当に私はツイてないな。