「最近ね、拓磨くん……ふと、悲しそうな表情をするの」
「悲しそうな表情?」
「そう。私のカン違いでなければ、拓磨くんの過去になんかあったんじゃないかって思うの」
「うーん……それは本人に聞いてみなきゃわかんないよね……」
でもなぁ、本人に聞くのはちょっと怖いというか……。
拓磨くんが傷ついちゃったりしたらイヤだなぁって思ってしまう。
『俺は……人を好きになることが、怖い』
そう言ったときの拓磨くんの表情が忘れられない。
「人を好きになることが、怖い……ってどういうことだろう」
「それ、矢野拓磨が言ってたの?」
「うん……」
私にはわからない。
私は星司くんを好きになってからずっと、星司くんを目で追いかけたり、目が合うだけでドキドキしたり、すれ違うだけで嬉しかったり……。
怖い、なんて全く思ったことがなかったから。
「過去に好きな人を失ったとか?」
「そう、なのかな」
「いや、これは勝手な私の考えだから、やっぱり本人に聞くべきじゃない?」
そうだ。
思い切って聞いてみよう。
ずっとこうやってモヤモヤしてるのもイヤだしね。


