「なんでもない」



「う、うん……?」



なんだったんだろう?
まぁいっか。



「ていうか、拓磨くん真面目になったけど……席はそのままなんだね」



藤永くんが本当は私の隣だったんだけど……。



「美憂の隣だけは譲れない」



「っ」



ほら……また真剣な顔でそういうこと言うから、私の心はかき乱されるんだ。


冗談なのか本気なのか悟らせないところも、拓磨くんのズルいところだ。



キーンコーン―――



すると1時間目の始まりを告げるチャイムが鳴った。



「はーい、席についてー」



古典担当の先生が教室に入ってきて、私は少し熱くなった頬をおさえて前を向く。
手は冷たいから熱い頬に当てると気持ちがいい。