「拓磨くんはお母さんの料理好き?」
「……どうだろうね」
拓磨くんは私の質問に少し表情を歪めた……気がした。
「さ、リンゴも食べ終わったことだし、俺はもう帰るよ」
そう言って立ち上がる。
「うん!気を付けてね」
「あぁ」
拓磨くんを玄関まで送る。
「じゃ、また明日」
「ばいばい」
軽く手をひょいっと挙げると、拓磨くんは帰っていった。
リンゴ、美味しかったなぁ。
明日は今日買ったリンゴの残りの2つ全部むいて持っていこーっと!
―――今思えば、このときからだったんだ。
拓磨くんの様子はおかしかったのは。
私は、彼のことを他の人よりは知っているつもりでいた。
でも、本当はなにも知らなかったんだ……彼のことを。


