確実に近づいてくる足音。

「なっ・・・・」

目の前の男の子は痛みに顔を歪ませながらも顔を上げて声のするほうに目を向けた。


「だ、誰だよ・・・?」

よく見えないのか、男の子は目を細めてそう呟くと、私の腕を摑んでいた手の力を緩めた。

今ならば、絶好の逃げるチャンスなのかもしれないけれど、体が言うことを利かない。

後ろから近づいてくる男の子(たぶん)がもし、彼の仲間だったらどうしよう・・・。

そんなことばかりが、頭の中を支配する。


私の選択肢の中に、逃げる、という強硬手段などないに等しかった。


「なにしてんの?」


楽しそうに弾む声。


「あ、あ・・・・・」


目の前の男の子は、さっきまでの怪訝そうな顔とは裏腹に、今度は真っ青な顔になっていた。

怯えたようなその表情に、私は後ろの男の子(たぶん)の声が悪魔のように思えた。


「あ、あ・・・・・



颯人さん・・・っ」


颯人さん――そう口にした瞬間、男の子は弾き飛ばされたように吹っ飛んだ。


大きな音を立てて壁に当たり、ずるずると崩れ落ちる男の子の口元は、切れて血が流れている。