「園ちゃん、やめときなよ。明日、仕事あるんでしょ?」
「・・・・・・・・・」
宥めるように私の頭を撫でながら優しい声でそう言う店長さん。
その手の温もりに、私はまた涙を流しそうになった。
――あの人も、こんなふうに手が温かった。
じわりと目尻にたまりはじめた涙を指でそっとぬぐうと、私は「もう少しだけ」と言ってまたお酒を飲み始める。
私がこんなふうに潰れるまで飲み始めた原因は、半年間付き合っていた彼氏にフラれたことからだった。
中学時代の付き合いなんて、まったくなくて。
高校生のときも一人くらいしか付き合ったことがなくて。
そんな恋愛経験の少ない私に恋人として付き合ってくれた彼は、半年という長い年月を共にしてきた。
ラブラブのカップルに比べれば、短かったかもしれないけれど・・・。
私にとっては、半年なんて考えられなかったほどに長かった。
そして、楽しかった。
本気で好きだった。結婚してもいいかな?って思うくらいに。
中学生時代も、高校生時代も触れるだけのキスで留まっていた私に、ほんの少しだけの期待だけを抱かせて、また彼とは別れてしまった。
ほんの触れるだけのキスだけで、彼とも終わってしまった。


