「おいおい、あんた。石田奏貴様のなんなの?」
あー、予想通り女子達の目が怖いです。ただいま、放課後体育館裏呼び出し中。
「だーかーらー、ただの友達!」
強気で返す私。その態度にムカついたのか……
「あんたなんかっ…あんたなんかっ…!」
突然、亜実に胸ぐらをつかまれた。
痛い。亜美の、女の子らしいばっちりネイルの長い爪が私の制服に痛々しいほど食い込んでくる。
「ちょっ!!やめ…
「何してんの?」
またもや、私の声を遮ったのは奏貴の声だった。奏貴は、今までにみたことがないくらいの目の鋭さで女子達を睨んでいる。
「っっウチらはっ…別に何も…。」
必死に隠す女子達。亜実なんか、泣き目になっている。
……まあ、そうだよね…。好きな人にこんなことしてるの見られたら、そりゃ泣きたいよね…。
嫌われちゃえ!!自業自得だ!!
…………なんて。私にはそんな事できない。
私はこれまで、たくさん傷ついてきた。
陰口、無視、暴力、暴言……。
だからこそ、わかるものがあった。
『私は、人を傷つけちゃいけない。』
それは、私が学んだこと。
普通、傷つけられた人は、仕返しがしたくなるもの。でも、仕返ししたら、その人たちと同じになる。
それに、傷ついた人は、その痛みがわかるからこそ、人を傷つけちゃいけないんだ。
だから、私は…。
「みんなは何もしてないよっ!ただ、ほら!少女漫画によくでてくる『呼び出し』ってやつ、どんななのかな〜って知りたくて。私のワガママに協力してもらっただけっ!」
一気に女子達が驚いた顔で私をみる。
奏貴は信じられない、という顔だ。
「それは、本当?無理しなくていいんだよ。」
心配してくれる優しい奏貴。
「無理も何も、本当だしっ!大丈夫大丈夫!」
人を傷つけない。これが私の道理だから。これは、この先も決して揺るがない。
「そっか。はやとちりごめんね!」
去る奏貴。すると、すぐに亜実に壁ドンされた。
「あんたっ…………なんで言わなかったの?」
亜実の震える声。
「だって…貴方は…奏貴が好きなんでしょ?私は…痛みがわかるから……人を傷つけたくないんだ。」
私は亜実に微笑む。私の考えは、他の人から見たら、偽善ぶってる、とか言われるかもしれない。それでもいい。
でも、亜美にはわかってほしい。
亜実が嗚咽を漏らす。
「偽善者ぶって!…なんてね。あんたっ…って……ほんといい奴だね…。ありがとう…。人を傷つけても、何もならないって…今やっと気付いた…。今までごめんね。」
わかってくれたんだ……。どんな小さなことだったとしても。通じたんだ…!
続いて亜美が口を開く。
「こんな私を無理に許してくれとは、言わないけどっ……
「許すよ。」
私は亜実を真剣な目で見つめた。
亜美も、泣いて腫れた目で私を見つめ返した。
私たちは、自然と抱き合った。今までのことに、終わりを告げるように。
「〜〜っ/////。と、友達になってあげてもいいけどっ。」
亜美は恥ずかしそうに、目を伏せてそう言った。突然の亜実の言葉に吹き出す私。周りの女子たちも笑い出す。
「え〜。やっぱ許さない〜笑笑」
「嘘つき!さっき許すって言ったくせに!笑」


私に、人生で初めて
女子の友達ができました。