月が輝く夜。

魔界の王国に王子とお姫様が生まれた。

王子の名前はルイス ガーネット。

お姫様はリリアン ガーネット。

彼はいずれ魔界を束ねる王として、彼女は魔界一と歌われる美姫として盛大な歓声と共に生まれた。

また、王都から遠く離れた街カトリシアでも赤子が生まれた。

名は、サラ ハーネス。



第1話
〈秘密の夜〉






夫婦は喜びに満ちたがそれも一瞬のつかの間で、魔女が運命を口ずさんだ。

魔界では、子が生まれると魔女がその赤子の運命を覗き見る。

魔女はふわりとタロットを宙に浮かばせ、一枚のカードを手にした。

「まあ、すごい。百年に一度と伝えられる先祖還りのようですわ。彼女は、始祖様……大変強力な魔力をお持ちです」

妻はキュ、と唇を閉じた。

夫は妻の肩を抱き寄せた。

その仕草の意味を知る魔女は深刻な面持ちで口を開けた。

「そうですねぇ。お二方様は王の血を引く純血の君……本来ならば魔界を制するセイミア王とアリア妃。もし、ことが知られればこの赤子は王国に奪われるか、最悪殺されるか……」

魔女は緊迫した空気に光を捧げた。

「セイミア様、アリア様。私の提案をお聞きください。彼女を人間界で育てるのです」

その言葉は、夫婦と赤子の運命を変えた。


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