祐がお風呂に入っている間、私はお母さんの洗った皿を拭いていた。
「祐はね、1度だけ。たったの1度だけ、彼女を連れてきた事があるの。」
祐の元カノの話…
胸がドキッとしたけど、少し気になっていた。
祐が愛したその人はどんな人だったんだろうって
私とその人を重ね合わせてるんじゃないかって、不安だった。
「その彼女と私が初めて会ったときはね、とてもボロボロだった。祐は見ず知らずの女の子を連れて帰ってきた。」
祐にとってはほっておけなかっただけかもね。そう言うけど、私はお母さんがこの話をしてどうしたいのかがわからなかった。
「それで…⁇」
「それでね、その女の子も萌音ちゃんと同じで親がいなかったの。里親にも捨てられホームレス状態だったの。」
そんな…
私より、何倍も悲しすぎるよ…
「その子、1年くらい預かっていたんだけどねその時に祐を好きになったらしくて。」
そうだよね。祐と一緒に暮らしてて好きにならない人なんているのかな⁇
「それで、祐はこれ以上傷つけたら死んでしまう。そう思って付き合い始めたそうよ。ちゃんとした恋愛感情じゃなかった。」
だから、安心してね 萌音ちゃん。
にっこり笑うお母さん。
だけど…
「その…女の子は…⁇」
「出て行ったよ。行き先もなにも告げないで、突然。」
「そうなんですか…。」
「でも、大丈夫だよ。この間、その子を見たの。元気に働いていたよ。」
そっか…よかった。
お母さんは、私と祐が元カノのことで喧嘩するのが嫌だったのかな⁇
「教えてくれて、ありがとうございました。」
「いいえ、祐と仲良くしてね⁇」
「はいっ」
「さぁ、先にお風呂に入ってきていいよ~」
「えっ、でも…」
「祐はもう上がってるから。はい、行った行った~」
背中を押され、お風呂場に向かった。


