そう言えば、ベンチに小さく2人の名前を書いてたよな。




「亜子、これに見覚えは⁇」




2人の名前を指差し、亜子に聞いてみた。



「…。亜子…慎也…⁇」




さっきまでとは明らかに反応が違った。




「慎也…⁇」





そうポツリと呟くと、いきなり頭を抱えて苦しみだした。



「亜子‼︎おい、亜子‼︎」




そう叫んでも亜子には届いていなかった。




数分して、亜子はやっと苦しまなくなった。



「亜子…大丈夫か⁇」




「…」



亜子に話しかけても何も聞こえてないみたいだった。




放心状態の亜子の肩を揺すると、いきなり泣き出してしまった。



「…っ…祐‼︎…慎也は…⁇慎也…会いたい…っ」




亜子は確かにそう言った。



『慎也に会いたい』




「思い出したのか…⁇」



「祐…慎也は⁇私っ…」




そういって、ポロポロ涙を流す亜子の手首を掴んで走った。