12年の白州

今関との愚痴大会が終わり、急いで高橋の元に向かおうとした。

しかし、その途中で須貝は足を留めた。
犯人を名乗る女性に出会ったからだ。


それは、高橋が向かった研究室に向かう途中に碑文谷警察署の出入り口でモデルの様なスラっとした女性がこちらに歩いて来るのが見えた。

見えたと言うよりは目を奪われたと言う表現が良いのかもしれない。

彼女は一般男性の短髪と感じるツンと立った髪型をしていた。

それでも小さい顔はその髪型と良く似合っていたし彼女のクールな雰囲気にとてもマッチしていた。

身長は165cmくらいだが、全体に外人女優の様なスラっとしたスタイルが更に高身長のイメージを増長させる。

そして彼女は須貝の前に来て歩みを止めた。

歩みを止めた女性はしっかりと須貝を見つめた。

須貝は一瞬仕事の事を忘れて彼女に見とれたが、自分が警官と言う事を何とか思い出し「どうしましたか?」と聞いた。

すると彼女は「世田谷区の鷹番で殺人事件があったでしょ?」と聞いた。

「ありましたが。。。」

「あの犯人は私よ。」と彼女は言った。

須貝は彼女が言っている事を理解する事が出来なかった。
それはあまりにも突然過ぎたし、それよりも彼女の全てに圧倒され、思考が正確な回路を巡る事が出来なくなっていた。

そして彼女は須貝に言った。
「あなたは世の中の汚れを知らないのね。」

「世の中の汚れ?」


「そう。例えばメディアで報道される芸能人による薬物の事件があったとする。特に芸能界は心をすり減らしながら仕事を取るから薬物でバランスをとる人が多いの。

でも薬物で捕まる人間は一部なの。ほんの一部。その他のまだ捕まって居ない人間はこれからネタとして使われる駒な訳。

最初は甘い話で薬物を投与され依存性を作る。
そして何かの話題を消す為にネタとして提供される。
わかるかしら?
世の中には表面上に開示される善と悪があるの。そして開示されていない部分に損と得があり、損得感情により汚れがうごめいているの。」

「はぁ。。」
ポカーンとした顔で須貝は気のない返事をした。

「あなたはまだその汚れを知らない。真っ直ぐで綺麗な瞳をしているわ。
でもそれは今後あなたの力になり落ち度にもなるわ。
そしてあなたはまだ、女を知らない?そうでしょ?」

「。。。はい」

「あなたに会えて良かったわ。また何処かで会いましょう」

そうして彼女は乗って来たアメリカンバイクに跨り、目黒通りに消えていった。