店内では一人の中年女性がカクテルを楽しんでいた。
薄暗い店内にバーテンダーが一人。バーテンダーも中年男性でどこか渋みがある。
僕はお店の扉を閉めた。

ウィスキーは男をもう一段階男にする。

そんなウィスキーと多少の下心を抱えて僕は色々なBARを巡っていた。

今のお店はモダンな雰囲気があり、バーテンダーも本物で(アルバイトの大学生のバーテンダーではないとして)申し分なかったのだが、下心を満たす環境だけが足りなかった。
僕が求めるBARにはお酒とバーテンダーと不思議な雰囲気をまとった女性が必要だった。

別に女性とどうなりたいだとか、そういった事よりも何かをどこかで期待出来る事が条件の一つだった。


そんな条件の揃ったBARに巡り会える事は正に一期一会だった。

今日はその日ではなかったと諦めて僕は家路をたどる。

家には白州12年というウィスキーがある。山梨に蒸溜所があり味も蒸溜所と同じように口に含んだ瞬間に緑が広がり心地よい森の香りがする。

正に本物の味だと思う。

そしてこの物語は全て白州から始まり、そして白州の中にある。