「さようなら、愛おしい人…」 囁くような、そんな声が聞こえて。 私のそばから、人の気配が消えた。 フッ、って。 本当に、消えた。 さっきまでそこにいたのに。 時計の針は12時を指していて、年を越したんだという事実だけを残す。 最初から、彼が年越しでいなくなることは知っていたから、そこまでの絶望感はない。 ただ、さみしさだけが募る。