「大丈夫よ、佐野君。いつかきっと、海司は目を覚ますわ。私はそれを信じてる」


そうじゃないと困る。


コイツさえ目を覚ませば、きっと元に戻れるはずだ。


そう。


絶対に…。


「そう…だね。俺も信じて待つよ」


そう言って、恵介はにっこり笑った。


何も話さない眠ったままの俺を見ていても仕方がないから。


俺達はすぐに病院を出た。


恵介と二人、広い病院の敷地内を歩く。


恵介とはいつも一緒にいたから、全く違和感がない。


俺はしばらく、自分が花音の姿だって事を忘れて恵介との会話を楽しんだ。